短歌選
加治彰之曲
1 志貴皇子
石ばしる垂水(たるみ)の上のさ蕨の
萌え出づる春になりにけるかも
2 在原業平
名にし負はばいざこととはむ都鳥
わが思ふ人はありやなしやと
3 作者不詳(春の七草)
セリ ナズナ ゴギョウ ハコベラ
ホトケノザ スズナ スズシロ 春の七草
4 柿本人麻呂
ひんがしの野にかぎろひの立つ見えて
かへり見すれば月かたぶきぬ
5 小野 老
あをによし寧楽(なら)の
京師(みやこ)は咲く花の
薫(にお)ふがごとく今盛りなり
6 永福門院
ほととぎす空に声して卯の花の
垣根もしろく月ぞ出でぬる
7 和泉式部
もの思へば沢の蛍もわが身より
あくがれ出づる魂(たま)かとぞ見る
8 石川啄木
汽車の旅 とある野中の停車場の
夏草の香(か)のなつかしかりき
9 藤原敏行
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風のおとにぞおどろかれぬる
10 山上憶良(秋の七草)
萩の花 尾花 葛花 なでしこの花
女郎花 また 藤袴 朝がおの花
11 安倍仲麻呂
あまの原ふりさけみれば春日なる
三笠の山にいでし月かも
12 若山牧水
白鳥(しらとり)は哀しからずや空の青
海のあをにも染まずただよふ