ともだちは海のにおい
工藤直子詞
加治彰之曲
ひとはみな 心の中に
海をひとつ もっている
その濃い みどりの海のうえに
ときどき小さな 魚がはねて
とこどき小さな しぶきがたつ
ひとの心の中に
いつ海は 生まれたか
おそらくむかし なにが悲しいのか
わからないほど 小さく
なにが つらかったか
忘れてしまうほど むかし
ひとはみな はじめて
まるい口を あけて泣いた
あのときの 涙のつぶが
海のはじまり
泣くたびに 流れた
塩からい 涙は
だれにも 知られぬ場所に
あふれ あふれ
それはたしかに 悲しみの波
それはたしかに つらさのうねり
それはたしかに そうなのだが
ごらん
いつのまにか 涙の海に
生まれて育った 泳ぐものたち
ひとはみな いつだって
塩からくて にぎやかな
海を 抱いているのだ